小説/ゆるいかんじ。
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よくいえば、自然豊かな町。
俺的にはただの田舎。
こんな場所で君に会えるなんて思いもしなかった
*‥*‥*
「ねぇ、暇!」
「え…」
朝のラッシュの時間。
だが、電車にほとんど人がいない。
ここは「ど」のつくほどの田舎だからだ。
この電車のある車両に二人の男子高校生が座っていた。
扉近くには、身長は160後半といったところだろうか。
少し小柄で、目が大きくて、髪がふわふわとパーマがかっている大祐がいる。
その隣には、大祐とはまるで正反対な遥。
身長は180以上。
目は大きくてつり目気味だが、どこか抜けているようなナチュラルボーイだ。
「はるか-、お前も話せよ-」
「え…?お前が話しすぎなんじゃ?」
「ほら、はい!話して?さんはい!」
「……」
「黙るなよ-!」
遥は小さくため息をついた。
大祐は朝から晩まで元気だが、遥は朝に少し弱い。
だからと言って、朝から大祐と一緒にいることが嫌というわけではないので不思議なところだ。
「も-仕方ないな-」
「え…」
「俺が話しちゃる!!」
「…やっぱり」
「くすくす」
いつからいたのか、大祐と遥と同じ車両に彼らと同じ制服を着た女の子が向かいの端の席に座っていた。
大祐と遥が彼女の方を見ると、あわてて口元を押さえる。
「ご、ごめんなさい…」
「あ、いえ。」
遥がそう言うと、女の子はにっこり笑った。
「二人とも、仲良しなんですね」
「……」
いつもならおしゃべりな大祐が何も答えない。
仕方がないので、遥が答えた。
「あ、まあ…幼馴染です」
「へえ。なんかぱっと見似てないのに、雰囲気がなんとなく似てる気がする」
「そうですか?…って大祐、なんか話せよ?」
遥が大祐を肘でつついた。
すると、大祐ははっとする。
「お、俺…波川大祐っていいます!こっち、遥」
「あ、私は楠木さやか」
「よ!よろしく!」
「うん、よろしくね」
大祐のたどたどしい自己紹介をきっかけに、その日の朝は3人で学校に行くことになった。
大祐は、少し緊張しているようでやたらテンションが高い。
さやかはふんわりとした雰囲気のある子で、ずっと大祐の話を楽しそうに聞いていた。
そして、遥はというと普段通りなんとなく大祐の話を聞きながらいつもと変わらない周りの景色を楽しんでいた。
*‥*‥*
「なあ、はるか…」
昼休み。
ご飯を食べ終えて中にはの木陰でのんびりとしていた遥のところに大祐がやってきた。
「ん-?」
「今日の朝の子さ、いい子だったよね」
「ん?……あ-、うん。」
遥にはもう、記憶から薄れていたことらしかった。
けれども、大祐の中にはとても印象に残っているようだ。
「なんかさ、仲良くなりたいんだよね」
「ふ-ん。ま、頑張ってみれば?」
遥はあくびをしながら木によりかかった。
大祐は遥の傍にしゃがむ。
「俺さ…あんなにかわいい子初めて見た。」
「まあ、普通にかわいいとは思うけど」
「え?遥も思った!?」
「え…いや、一般的にね?」
「そ…だよね」
大祐は大きくため息をついた。
そして、思う。
高校に入学して何も変わらなかった。
昔と同じように遥が傍にいて。
ただ、のんびりと一日を過ごして。
けれど、今日の朝の時間だけどこか違う。
彼女の声と姿とが目にも耳にも焼きついて離れない。
朝の出来事だけが、頭の中でぐるぐる廻る。
嫌じゃない、感覚。
まだ、大祐はこの気持ちの意味をしらない。
気付くのは、もっと先。
次に来る春、彼女との距離が近づいた時。
その芽にきづく。
こんな場所で君に会えるなんて思いもしなかった
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