小説/ゆるいかんじ。
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
*‥*‥*
俺は食べ終わると、言われた通り中庭に行った。
京也は木陰のベンチにさっきの子と一緒に座って話している。
なんとなく、行きづらい。
「あ、遥来た。じゃーね、瑠衣ちゃん」
「うん。バイバーイ」
彼女は京也に手を振りどこかに去ってしまった。
邪魔した気がする。
俺は、京也に近づくのになんとなく引け目を感じた。
「遥、早くこっち来いよ」
京也が手招きをした。
笑っている。
なんとなく安心して、俺は京也の座っているベンチに近い木にもたれかかった。
風がサァッと吹く。
今日はいつもより雲の流れが早いように見えた。
地面に広がるシロツメクサがゆらゆらしている。
「なぁ、遥」
「ん?」
「今日の帰りとかに、大祐と2人で帰れば?」
京也が柔らかく笑った。
たぶんこの件については素直に話た方がよさそうだと、俺も思っていたところだった。
「そうする」
今日はお互い用事もないし、ゆっくり話せる。
大祐なら、ちゃんと話を聞いてくれるだろう。
「そうと決まれば後はお前らの問題だな。」
京也は立ち上がって伸びをした。
木陰から京也の肘あたりがはみ出す。
正午の光は少し眩しい。
「ん-…。そうだ。瑠衣ちゃんて俺の妹だから」
「そうなんだ。」
「可愛いからって手出すなよ?」
京也はにやりと笑ったが、目が笑っていない。
本当に大切なんだろうと思った。
「いや。俺、あの子とは話すテンポが…」
「ま、確かにな!」
京也が笑った。
日差しのせいか、眩しく見える。
「でも、会った時には挨拶くらいしてやって」
そう言った京也は、どこか寂しそうに見えた。
俺が何も言わずに頷くと、京也はまた柔らかく微笑んだ。
これはきっと、こいつの作り笑いだ。
でも、どうして。
そう思っても俺は聞かない。
聞いて欲しくなくても、気づいていてくれるだけでもいいときもある。
だから、聞かない。
「いい天気だよなあ。」
「ほんと」
俺らはチャイムが鳴るまで、そこで春の風の中にいた。
PR