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小説/ゆるいかんじ。
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*‥*‥*



「あ、あのっ」


夕暮れ時。

下駄箱にオレンジ色の光が長く差し込んでいる。その中に一つ、長い影が入り込んできた。


「……遥くん」

「…何?」


夕焼けが穏やかに明るい春の光。
けれども、その中で目の前にある影は深い色をしていた。


「一緒に…帰って下さい」





断る理由も見つからない。
だから、ただ何も言わなかっただけ。
けれど、この子はあのクスノキさんだった。


「あの…さ」


彼女はうつむきながら言う。


「遥くん」
「ん?」
「私………」


「やっぱり、いいや」


クスノキさんは笑った。
俺は、その先を聞かない。
どうして、今隣を歩いているのか。
それも、聞かない。
ただ、俺は口をつぐんだ彼女が言いたかったことを、言うまで待った方がいい気がしたから。



「ねぇ」
「ん?何でしょう?」


彼女は小首を傾げてこっちを向いた。


「今日は、部活だったの?」
「うん。あ、はるかくんって私の部活わかるの?」


意地悪く笑って、少し上目づかいで俺を見た。


「……吹奏楽?」
「ブーっ!違うよ!やっぱ、知らなかった-」
「うん、ごめん」

「美術部だよ。基本的に私は水彩画」
「へ-。絵が上手いのか」
「少し自信はあるよ。でもね、やっぱり上には上がいるの」


そう言っている彼女は嬉しそうだった。
絵が好き、と伝わってくる。



ふと、彼女は呟いた。

「あのね、美術室からよく見えるんだよ」
「?」

「弓道部」

「……」


「きゅ、弓道ってすごいよね!雰囲気が張り詰めてて、矢が的にあたるとか!」

「なかなか難しいよ」
「そうなんだ。じゃあ、当たった時は嬉しいね」


「うん」




毎日通る帰り道。
ただの夕焼け。
それが、なぜかいつもと違う気がした。



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春の彩
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君はいつまでも空高く
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