小説/ゆるいかんじ。
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*‥*‥*
昼休みになると、京也は食堂に向かう。
俺も今日はついて行った。
「…なんか、キモくね?」
「何が?」
「俺とお前が2人で食堂って…しかもお前弁当だし!」
京也は俺の前に広がる弁当を嫌そうに指した。
何が嫌なのかわからない。
「よくわかんない」
「いや、よくわかんねぇのはこの状況だろ!?」
「そんなことよりさ-」
「しかとかよ。」
「さっき…」
「てかお前さ、俺の前にちゃっかりいるけど、何で?」
「……」
今日の京也はやたら突っ込んでくるので、なかなか本題に入れなかった。
しかも、少しそわそわしていてあまり話を真面目に聞いてくれそうな雰囲気でもない。
「うぜ-って顔すんな」
「……あのさ、もしかしたら大祐わかってるかも」
「え、何が?って、あ-…まじで?」
京也がやっとこっちを見た。
俺は話を続ける。
「うん。だってさっき、『何か俺に隠してない?』って聞いてきた。」
「そっか…」
京也は、もぐもぐとカレーを口に含みながら真面目な顔をした。
が、頬が膨らんでいるのであまり真剣に見えない。
「てかさ、結局お前はどうしたいわけ?」
京也がちらりと俺を見る。
「俺?」
「そう。お前が彼女に気があるなら大祐は負けってだけの話になるじゃん」
「いや-……好きとかよくわかんないし」
そう言うと、京也は突然むせた。
「ゴホッ、ゴホッ」
「大丈夫?」
京也は一気に水を飲み干す。
そして、乱暴にコップを置いて顔を寄せてきた。
「お前、好きになったことないの?」
「ん-…うん?」
「なんで疑問形なんだよ」
「いや-」
「ま、いいや」
そう言って、京也は立ち上がった。
皿は空っぽだ。
俺の弁当はまだ残っている。
「行くの?」
「いや、片付けてくる」
そう言って、京也は机に財布を置いたまま行った。
俺はごはんを運びながら考えた。
たぶん、俺は楠木さんに対してそういう感情はないと思う。
今までにそういう気持ちにはなったこともあるから、それとは違うとなんとなくわかる。
だから、次にそういう雰囲気な事があったらどうにかしないといけない。
「あれ?京也いなくなっちゃったの-?」
突然、聞き慣れない声が背後からした。
見たこともない女の子が首を傾げている。
「え……京也は、今片付けに行った」
「ふーん……」
そう言って、その子はじろじろと俺を見る。
彼女の長く緩やかなパーマが触れた。
「あの……近い」
「え、あ!ごめんね?」
彼女はぱっと離れたが、照れた様子も見せなかった。
慣れているのだと思った。
「君、かっこいいね!モテるでしょ?ま、あたしの好みじゃないけどっ!
あ、もしかして彼女いるの?ん-でもいなさそう!なんか、固いよ?空気。
でもでも!それがいいのかもっ!あ、京也だ!きょ-や-っ!」
俺の頭がついていけないスピードで彼女は言った。
これが本物のマシンガントークだ、と初めて理解した。
「お-、まゆ」
「京也っ!」
その子は京也に飛びついた。
京也は少し嬉しそうにその子の頭を撫でる。
なんとなく、犬とそれを可愛がる人の図に見えた。
「あ、遥。早く食え!食い終わったら中庭な!」
そう言って、京也はその子を連れて食堂を出て行った。
なんだか、嵐が去った後のような気分だ。
そういえば、あの子は京也の彼女なのだろうか?
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